私の住んでいる渋谷区は水の多い土地です。
湧水がつくる川や玉川上水など、さまざまな流れが区内を走っています。
もっとも今はそうした流れは暗渠(地下の川)となり見えません。
最近はテレビで昔の地形や暗渠が取り上げられるので、多くの方に知られるようになりました。
流れのひとつ、初台川の湧水が近所にあるのでカメラを持って行ってみました。
ひっそりとした裏路地に湧水はあります。すぐ脇の階段は橋の欄干をリサイクルした石材のようです。
田端橋と美しい字で彫られています。こういうのを見るとはっとしますね。
田端橋の石段は、湧き水の流れを上からふさいだ道の手前に平行に置かれています。つまり小さな橋の欄干とも受けとれる位置です。
橋をとり外して階段を作った方は石材を扱う職人さんだったと思います。
石に文字を彫るのも、石の橋や階段を作るのも職人技術の賜物です。
郷土の橋と職人技術の記憶をここに留めたのでしょうか、、
残して下さった方々の心を感じます。
ノスタルジックな階段の脇には湧水。噴出し口に石柱がありました。
お水にそっと手を入れてみた。温かい!昔実家で湧いていた井戸水を思い出します。
流れの周辺にはアジアンタムやクレソンが自生していました。
ここ初台だけでなく、少し世田谷よりの宇田川、代々木公園近くの河骨(コウボネ)川も暗渠となっています。
それらの川は合流し渋谷駅の地下で渋谷川になります。
先日の台風のときは近所の暗渠が危険ゾーンになり気が気ではありませんでした。
豪雨のときは川が合流する代々木公園周辺が水没したり、水が吹き上げたこともあります。
今でも代々木エリアは工事中によく水(井戸)が出るそうで、「たびたびお清めを頼まれますよ。」と近所の神主さんにお聞きしたことがあります。
こうした湧水や玉川上水は昔の人々にとって大切な流れでした。
江戸時代の切絵図(古地図)をみると、ここらへんは殆どが田畑ですので、作物を作ったり、生活用水としてずいぶん役立ったことと思います。
”田端橋”は渋谷のどこかの”田んぼの端”に架けられていたんじゃないでしょうか。
昔のひとは今は階段になっている欄干に身をよせて、のどかな景色を眺めたことでしょう。
ラヴェル 水の戯れ