古いものが消えてゆく町、虎ノ門5丁目。
ファンタのシール、、なつかしいですね。
永井荷風 偏奇館吟草より
涙
泣きたいやうな
かなしいことも
泣くならせめて
ふたりして
ふたりで泣けばかなしいことも
こころに残るおもひいで
消えずにのこるおもひいで
やがてうれしい夢になろ
泣きたいやうな
かなしいことも
泣くならせめて
ふたりして
ふたりで泣けばかなしいことも
泣いているうち忘られる
せめてまぎれてわすられる
涙ふくなよこぼれても
谷底にあったトタンで囲まれたふるい下町風のアパート。
昔は住人でにぎわっていた事でしょう。
さようなら、我善坊谷。荷風先生が歩いた町。
今日で荷風先生の詩と消えていく町のすがたシリーズはおしまいです。
しめくくりに涙という詩を載せました。
さらりと悲しみへの態度を歌っています。
泣きたいようなかなしいことがあるなら
涙をこぼれるままに、思い切り泣きなさい、という歌。
曲のような詩ですが、よく読むとこういう考え方もある、と伝わります。
かなり現代的な人だったんですね。荷風哲学ここにあり。
普通の人なら「泣いたって仕方ないでしょ」とか「自分のせいだろ」とか、謎のお守りくれたりとかしそうですが、思い切りなきなよ、と言ってくれるのは荷風先生と宇多田ヒカル先輩くらいじゃないでしょうか。ヒカル先輩のTime will tellっていう曲もこんな感じです。
ともに悲しむひとがいないなら、涙を拭かずこぼれるままに一人で泣くの、、、
そう、荷風先生のようにね。